カルトの洗脳/マインドコントロールを解くために、絶対に知っておいて欲しい事

知人や家族の一員がカルト宗教団体にハマってしまい

「どうすれば、洗脳(もしくはマインドコントロール)を解けるか?」

というご相談をいただくことがあります。

これに関する私の考えを書きたいと思います。

カルト団体の洗脳、マインドコントロール

まず、「洗脳」と「マインドコントロール」という言葉の定義から。

この二つは似ているようで異なっています。

洗脳とは

語源は、中国語の「洗脑/洗腦」。

これが英語でBrainwashingと翻訳され、
更に日本語に訳されて「洗脳」となりました。

この概念は、1951年、
ジャーナリストのエドワード・ハンターによってもたらされました。

ハンターは、朝鮮戦争下で中国人民志願軍の捕虜となったアメリカ兵士が、
思想改造され、共産主義者となった現象を
「Brainwashing(洗脳)」と呼んだのです。

当初、洗脳する側は、洗脳される側にとって敵であるため、
洗脳には、かなり強制的な手法(暴力や脅し、恐怖など)が用いられます

この洗脳の具体的な実例は、「パトリシア・ハースト誘拐事件」です。

1974年2月4日、
新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストの孫娘パトリシア・ハースト(当時19歳)は、
左翼過激派シンバイオニーズ解放軍(SLA)に拉致されます。

SLAは、パトリシアの身柄を解放する代わりに
総額900億円に及ぶ莫大な身代金を要求。

その間に、パトリシアは目隠しされたままの監禁などの
強制的な洗脳を受け・・・

なんと、2か月後にはサンフランシスコの銀行に
SLAのメンバーとして現れ、銀行強盗に参加したのです。

 

マインドコントロールとは

一方、マインドコントロールはそこまで強制的なものではありません。

もっと巧妙だと言っていいでしょう。

マインドコントロールにおいて、コントロールする側は、敵ではなく、
友好的な存在としてコントロールされる側に接触します

コントロールされる側は相手に抵抗しませんから、
暴力などの極端な手段は用いられません。

通常は、段階的に、その団体の思想が「教え込まれ」ます。

具体例を挙げますが、
私はサイエントロジー教会で行われているのは、
洗脳というより、マインドコントロールであると考えています。

初めて教会(もしくは教会の末端組織)に接触した人は、
このように告げられます。

私たちは、サイエントロジーの理論を強制しません。

あなたにとっての真実が真実なのです。

サイエントロジーは信じるものではなく、実践するものです。

実践して効果を確認してみてください。

サイエントロジーの正しさを主張するのではなく
参加者の自由意志に委ねる寛大な姿勢です。

ここで、多くの人は安心して入門サービスを始めたり
書籍を読んだりします。

しかし、しばらくすると、状況は変わってきます。

段階的な「教え込み」が始まるのです。

その一例が、「勉強の技術」です。

「勉強の技術」とは、創設者のハバードによって提言された、
勉強の3つの障害を克服するためのテクニックです。

その一つにこういった理論があります。

人が勉強に挫折してしまったり、混乱してしまったり、学び続けられなくなってしまう唯一の理由は、理解できていない単語を通り過ごしてしまうからです。

混乱してしまったり、内容を把握できなかったり、学ぶことができないのは、意味を掴めなかった単語の後にやってきます。あなたが調べなければならないのは、新しく出会った単語や、見慣れない単語だけではないかもしれません。

 

「理解できない単語によって学習が妨げられる」というのは
非常にまっとうな意見だと私も思います。

しかし、
それが、「学び続けられなくなる唯一の理由」というのは
極論ではないでしょうか。

この理論は、
教材がすべて正しく、一つの間違いもない
ことを前提としています。

裏を返せば、

「サイエントロジーの教材はすべて正しく、
間違えるのは生徒の側」といっているわけです。

この「勉強の技術」の内容は、
サイエントロジーのすべての書籍や教材の冒頭に載せられています。

また、コースで勉強していて詰まった時には
勉強を指導する「監督者」によって
「わからない言葉を調べなさい」と言われます。

もし、生徒が書籍や教材の内容に疑問を持ったら
「わからない言葉を探しなさい!」と言われます。

勉強の技術の教え込みも、
サイエントロジーのマインドコントロールの一部、
と言っていいでしょう。

もちろん、
サイエントロジーの教え込みはこれだけではありません。

・サイエントロジーに対して批判的な人は、
他の人に知られたくない「罪」を犯している。

・サイエントロジーの活動に反対する人は、
反社会的なサイコパス(抑圧者)である。

・病気の原因は、身近に抑圧的な人間がいるサインである。

等々・・・

トレーニングやオーディティングを受け始めると
こういった理論を学びますから
どんどんサイエントロジーの考え方に染まっていくわけです。

繰り返しますが、
これらの教え込みには暴力や脅しなどは用いられません。

参加者は、巧妙に誘導されたにせよ
自分自身で同意し、選択する形になります。

では、こういったマインドコントロールを解く方法はあるのでしょうか?

カルトのマインドコントロールを解くことはできるのか?

正直に申し上げますが、カルト団体に所属していて活動している人に

「あなたはマインドコントロールされている。目を覚ましなさい!」

「あなたの所属しているのは危険なカルト団体よ!今すぐ辞めてちょうだい!」

といっても、ほぼ効果はありません。

効果がないどころか、カルト団体を非難すればするほど、
その人の心はあなたから離れていき、カルトに固執するようになります

その理由について、非常に的を得たツイートがあったので、ご紹介しますね。

 

カルトへの参加に限らず、
人が選択したこと、信じていることを否定されると
その非難や否定は、自分自身に対する非難や否定となります。

では、どうすればよいのでしょうか?

まずは、そのカルトへの参加者との
信頼関係を構築する、もしくは取り戻すことです。

そのための決まった方法はありませんが
まずはカルトに対しての非難や否定
本人の生き方に対する非難や否定を止めることです。

カルト問題に限らず、
他の人の考えを変えることは出来ません。

あなたのその人に対する態度を変えることしか出来ないのです。

しかし、あなたが本当にその人のことを思っており
信頼に値する存在だとわかれば
いつか、その人が団体に疑いを持った時に
あなたに助けを求めてくるでしょう。

 

参照文献:
『マインドコントロールの恐怖』スティーヴン・ハッサン著

『マインド・コントロール』岡田尊司著