サイエントロジーに参加したことがある人も、ない人も、サイエントロジーの真実を知るには必ず見ていただきたい映画、それがこのゴーイング・クリア サイエントロジー・アンド・ザ・プリゾン・オブ・ビリーフ(Going Clear Scientology and the Prison of Belief)です。
アメリカ人作家であるローレンス・ライトの原作本「ゴーイング・クリア:サイエントロジー、ハリウッド、信仰という名の牢獄」Going Clear: Scientology, Hollywood, and the Prison of Belief」を、ドキュメンタリー作家であるアレックス・ギブニーが映像化したもので、エミー賞7部門にノミネートされました。
ちなみに私は、原作に目を通したうえで、このドキュメンタリーを見ています。また、20年間サイエントロジー組織でスタッフとして働いてきました。
そういった視点からのレビューになります。
まず、欧米諸国ではサイエントロジー関連の書籍はたくさんありますが、残念なことに、日本語にはほとんど訳されていません。
ですので、このドキュメンタリーは、
- 家族がサイエントロジーに参加したけれど、実際にどんな団体なのか知りたい人
- サイエントロジーの初級サービスを始めたが、このまま続けてもOKなのか知りたい人
にとっては、非常に役に立つ資料だと感じました。
ただ、おそらく、すでにサイエントロジーに参加して、その理念に共感している人、スタッフとして働いている人にとっては、
「でっち上げた」
「そんな事実は存在しない」
となるでしょう。
そう感じるのも無理はありません。
私自身も20年間サイエントロジーで活動してきましたが、おそらく、サイエントロジーを離れる前に見たら、
「サイエントロジーの敵対者が作り上げたブラックPR(プロパガンダ)映画だ」と感じたでしょう。
その理由は、サイエントロジーによる思考のコントロールが余りにも巧妙かつ強力だからです。
また、一般のスタッフにも、非常に多くのことが隠されています。
例:
・ハバードの妻メアリー・スーは、1979年、アメリカ合衆国連邦政府に対する陰謀の罪で起訴され、5年の懲役刑となり、それ以降、死ぬまでLRHとは会うことはなかった。
・LRHはメアリー・スーと結婚する前に2度の結婚歴があり、そのうちの一回は重婚であった。(サラ・ノースラップとの結婚)
・シーオーグでは妊娠した女性はコムエブのようなジャスティス・アクションにかけられ、その後判決として「中絶」が指示されることがあった。(オーストラリアでの事例)
・現在のリーダーであるデビッド・ミスキャベッジの実の父親は、サイエントロジーから離れ、「Ruthless: Scientology, My Son David Miscavige, and Me(無慈悲:サイエントロジー、我が息子デビッド・ミスキャベッジと私)」という、教会とミスキャベッジを糾弾する書籍を出している。
・LRHと働いていたシーオーグの役員が何人もサイエントロジーを去っている:
プロTRフィルムに「ジョー」として出演したダン・クーン(LRH Technical Research and Compilations Unit in the Senior C/S International)
OSA Intとしてスポークスマン役を務めたマイク・リンダー
Inspecter Generalとして、ミスキャベッジの片腕として働いていたマーティ・ラスバン
まず、サイエントロジーに参加した人は、反サイエントロジーの媒体を見ないように教え込まれています。
また、サイエントロジーに対する批判を行っている人は「その人自身が人に知られたくない犯罪行為を行っており、真実を見つけ出すサイエントロジーを恐れている」からサイントロジーを攻撃すると教え込まれています。
サイエントロジストは、上記のような指示が「思考のコントロール」の一部であることさえ気が付いていません。
さて、「ゴーイング・クリアー」ですが、いくつか見所を記しておきます。
- 有名なハリウッドの俳優や脚本家が、なぜサイエントロジーに参加したのか、その経緯が本人の口から語られる
- L.ロン ハバードの人生における「サイエントロジストには決して知らされていない」事実
- サイエントロジーが「批判者」に対して行う不法な攻撃
- サイエントロジーのリーダーによる暴力(複数の証言あり)
- サイエントロジーの上級レベルの教義内容
スキャンダラスな内容ではありますが、細部にこだわった非常に知性的なドキュメンタリーです。
特に、サイエントロジーの諜報組織「OSA」のリーダーとして働いており、現在はサイエントロジーに批判者になっているマイク・リンダーの顔つきの変化は興味深いですね。
サイエントロジーでスポークスマンとして働いていた時の彼の「能面」のような表情と、現在のもっと人間的になった表情を見比べるだけで、多くのことがわかります。
「完全なる自由を獲得する」ために参加した人たちが、自由を失う、という矛盾・・・まさに、「信仰という名の牢獄」です。
サイエントロジーの倫理体系の一部である「エシックス・コンディション」には、何かに対して疑いを持っているのなら、まず両方の側をよく調べて、その上で決断を下すべきとあります。
これを読んでいるあなたがサイエントロジストであるなら、サイエントロジー側の主張だけを妄信するのではなく、こういった外部からの客観的な情報にもきちんと目を通して検討することをお勧めします。
もし、サイエントロジーの理論が正しいものであるならば、そういった批判にも耐えることができるはずです。
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ゴーイング・クリア サイエントロジー・アンド・ザ・プリゾン・オブ・ビリーフ (字幕版)